十一月ともなりますと、朝晩寒いなと思う日も多くなります。
診療所は冷房と暖房で、ほとんど一年中途切れることなく室温管理しているのですが、一年の間でこの時期と春の一時期だけ、空調機を止めることができます。
少し寒いなと思ったときは、普段着ている半袖の短い診療着の上に“コート”と呼ばれる、長袖の長い白衣を着ます。
「なぜお医者さんは白衣を着るのですか」
と聞かれることが時々あるのですが、その答えのひとつは
清潔感を感じるため。
二つめは、汚物から身を守るため。
三つめは、汚物(医療関係で最も恐ろしく、最も頻繁に出会うのが血液です)が付いてもすぐに日立って気が付くようにということでしょう。
それでは手術着の色はなぜグリーンなのでしょうか。
それはグリーンは赤の補色だからです。
手術中は血液をジッと見つめ続けなけれぱなりません。
すると我々の眼は、ほかのところを見てもしばらくの間、その血液の形が薄ぽんやりと眼に写って見えてしまう「残像」という現象が起こるのです。
しかし血液の赤の補色であるグリーンを見ることによって、早期に「残像」を消すことができるのです。
私たちの日ごろの生活も血液をにらみ続けているような生活ではないでしょうか。
やらなくてはならないと思いこんでいる事。
時間に追われてチクタク、チクタク、セカセカ、セカセカしている事。
ふと気が付くとそんな生活が当たり前になり、その価値観にとらわれて抜け出せなくなっているのではないでしようか。
十一月からは『報恩講』の季節です。
各お寺では法要が行われます。
仏法をお聞かせいただける季節です。
凝り固まった価値観を「仏法」に照らしてみてはいかがでしょうか。
ストレスでカチカチになった「残像」が薄れ、新たな価値観が芽生えていくことでしょう。
その価値観こそが真実のものの見え方なのです。
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